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知的財産関連ブログ / 特許分析とは?基本から実践方法、主なツールを徹底解説

特許分析とは?基本から実践方法、主なツールを徹底解説

  • 「上司から競合の技術動向を調べるよう言われたが、何から手をつければ良いのだろうか」
  • 「特許分析が重要だとは聞くけれど、具体的なやり方がわからない」
  • 「膨大な特許情報を効率的に分析できるツールや方法はないだろうか」

企業の知的財産部や研究開発部門で、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、特許分析の基本から具体的な手法、ツールの選び方、そしてAIを活用した最新動向までを網羅的に解説します。

本記事を読めば、特許分析の全体像を理解し、無料ツールで今日から始める方法から専門家活用まで、自信を持って業務に取り組めるようになります。

分析結果を事業戦略に活かし、事業をより充実させるための第一歩を踏み出しましょう。

特許分析とは

特許分析は、単に公開された情報を集めるだけの作業ではありません。

企業の未来を左右するビジネス戦略を描くための、極めて重要な知的活動です。

まずは、特許分析の基本的な定義と、なぜ特許分析が不可欠なのか、その目的を理解しましょう。

特許分析の定義

特許分析とは、世界中で公開されている特許情報を収集・解析することです。

収集・解析した特許情報から技術のトレンド、競合他社の動向、そしてまだ誰も気づいていないビジネスチャンスを読み解きます。

近年、技術革新のスピードが急速に高まり、競合他社との差別化や市場での優位性を確立するために、特許情報の活用がますます重要になっています。

単に特許を出願・取得するだけでなく、他社の出願動向や技術トレンドを分析することで、自社の研究開発の方向性を最適化し、リスク回避が可能です。

今、特許分析は「攻めの知財戦略」を実現するための必須プロセスとなっています。

特許情報は、最新技術の宝庫です。

この宝の山から有益な知見を引き出し、自社の戦略に活かすことが、特許分析の本質的な価値といえます。

特許分析の目的

特許分析を行う目的は企業の置かれた状況によってさまざまですが、主に以下の4つに大別されます。

ご自身の業務がどれに当てはまるかを確認することで、分析の方向性が明確化します。

目的 主な分析内容 特許分析でわかること
技術動向の把握 特定技術分野の出願件数推移、主要な技術テーマの変遷などを分析する 今、どの技術分野が伸びているのか
注目すべき新しい技術は何か
競合分析 特定の競合他社の出願動向、技術ポートフォリオ、共同出願関係などを分析する ライバル社は次に何を開発しようとしているのか
他社の強み・弱みはどこにあるのか
新規事業探索 特許の出願が少ない技術領域(空白領域)や、異分野技術の組み合わせを探索する 未開拓の市場や、新たなビジネスチャンスはどこにあるか
自社の技術を応用できる新しい分野はないか
知財リスクの低減 自社製品・技術が他社の特許権を侵害する可能性がないかを調査・分析する 新製品をリリースする上で、注意すべき他社特許は何か
特許侵害訴訟のリスクをどう回避するか

特許分析の進め方【実践5ステップ】

特許分析は決まった手順に沿って進めることで、初心者でも着実に成果を出せます。

以下では、基本的な5つのステップと、各ステップで用いる代表的な分析手法を解説します。

ステップ1:目的の明確化

分析を始める前に、もっとも重要なのが「何のために分析するのか」という目的を明確にすることです。

例えば、「競合他社のEV向け半導体技術の動向を把握し、自社の研究開発テーマを決定する」のように具体的に設定します。

目的が明確であれば、その後の情報収集や分析の軸がぶれることは少ないでしょう。

ステップ2:特許情報の収集

次に、目的に沿った特許情報をデータベースから収集します。

特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」などの公的データベースは無料で利用でき、非常に強力です。

単純なキーワード検索だけでなく、「国際特許分類(IPC)」などを組み合わせることで、不要な情報を除外し、精度の高い検索が可能になります。

リンク: 特許情報プラットフォーム J-PlatPat

ステップ3:データの整理・加工

収集した特許情報は、そのままでは分析しにくい場合がほとんどです。

ExcelやGoogleスプレッドシートなどを用いて、出願人、出願年、技術分類などでデータを整理・加工します。

この地道な作業が、後の分析の質を大きく左右します。

ステップ4:分析・可視化

データが整理できたら、いよいよ分析の工程に入ります。

以下では、代表的な4つの手法を紹介します。

目的に応じて以下の手法を使い分ける、あるいは組み合わせることが重要です。

定量分析

出願件数の推移や企業シェアといった数値データをグラフ化し、客観的な事実を把握する手法です。

例えば、特定の技術分野における出願件数の年次推移を見ることで、その技術の成長期や成熟期を読み取れます。

これにより、技術全体の大きな流れや、主要なプレイヤーは誰なのかを直感的に理解できます。

定性分析

個別の特許情報を深く読み込み、そこに記載されている「発明が解決しようとする課題」や「解決手段」を分析する手法です。

技術の具体的な内容や独自性や、その発明が持つ本質的な価値を深く理解できます。

初心者の方は、まず要約や請求項を読むことから始めましょう。

パテントマップ分析

収集した特許情報を、技術要素や出願人といった軸でマトリクス状に整理・可視化する手法です。

パテントマップ分析により、どの企業がどの技術分野に注力しているか、逆にまだ誰も手をつけていない「空白領域(ホワイトスペース)」はどこか、といったことが一目でわかります。

パテントマップは、新規事業や新たな研究開発テーマを見つけ出すための強力な武器です。

テキストマイニング

特許公報に含まれる大量のテキストデータを専用ツールで解析し、頻繁に出現する単語や、一緒に使われることが多い単語の組み合わせを見つけ出す手法です。

人の目では気づきにくい技術トレンドや、潜在的な技術課題を客観的に抽出できる可能性があります。

オープンソースのツールもあるため、試してみる価値は十分にあります。

ステップ5:レポート作成と提言

特許分析は、分析して終わりではありません。

分析結果から何が言えるのかを導き出し、それを基に「次に何をすべきか」をまとめたレポートを作成します。

上司や経営層が意思決定できるよう、客観的なデータに基づいた説得力のある報告を心がけましょう。

この最終工程こそが、特許分析の価値を最大化する鍵です。

主な特許分析ツール

特許分析を効率的かつ高度に行うためには、ツールの活用が欠かせません。

以下では、事業の目的や予算に応じて最適なツールを選べるよう、無料ツールから最新のAI搭載ツールまで幅広く紹介します。

まず試すべき無料ツール

高価な専門ツールを導入しなくても、無料で始められる特許分析はたくさんあります。

まずは以下のツールを使いこなし、分析の基本をマスターすることから始めましょう。

ツール名 種類 主な用途 特徴
J-PlatPat 公的データベース 特許情報の検索・閲覧 日本の特許情報を網羅。無料で利用できる。
Espacenet 公的データベース 特許情報の検索・閲覧 欧州特許庁が提供。世界中の特許情報を検索可能。
Excel / Google スプレッドシート 表計算ソフト データ整理・加工、グラフ作成 収集したデータの整理や、定量分析の可視化に必須。

これらの無料ツールだけでも、競合企業の出願動向調査(年間推移グラフ作成)、技術分野別の出願シェア分析、簡易的なパテントマップ作成が可能です。

本格分析に使える有料ツール

より本格的な分析や定常的なウォッチングが必要になった場合は、有料ツールの導入を検討しましょう。

手作業では膨大な時間がかかる処理を自動化し、分析の効率と精度を飛躍的に向上させられます。

ツール名 特徴 価格帯の目安
Patseer 多機能でコストパフォーマンスに優れたクラウド型ツール。 中価格帯
Orbit Insight (Questel) 業界標準とも言える高機能な分析プラットフォーム。 高価格帯
Biz Cruncher 日本企業向けに開発され、日本語のインターフェースが充実。 中〜高価格帯

有料ツールを選ぶ際は、自社の分析頻度や予算に応じて検討しましょう。分析業務が定常化し、無料ツールでは効率が悪いと感じたタイミングが導入時期の目安です。

AI搭載ツールの動向

近年、AI技術の進化が特許分析の世界を大きく変えようとしています。

AIを活用することで、これまで人手では不可能だったレベルの分析が、短時間で可能になります。

特許分析に用いられるAI搭載ツールの主な機能は以下の通りです。

  • 自動要約:数百件の特許公報の内容をAIが瞬時に要約し、内容のスクリーニング時間を大幅に短縮する
  • 高精度な類似検索:キーワードだけでなく、文章の意味を理解して類似する特許を検索する
  • パテントマップ自動生成:データを投入するだけで、AIが最適な切り口でパテントマップを自動で作成する

これらのAI搭載ツールは、分析業務の効率化はもちろん、人間では気づかなかった新たな発見をもたらす可能性を秘めています。

ただし、学習データが特定の企業に偏っている場合もあるので、あくまでAIは補助ツールとして活用し、最終判断は人間が行うようにしましょう。

特許分析で陥りがちな3つの課題と解決策

特許分析は強力なツールですが、初心者が実践する上ではいくつかの壁に直面することがあります。

よくある課題とその解決策をあらかじめ知っておくことで、スムーズなスタートを切れます。

ぜひ、以下の表を参考にしてください。

課題 具体的な内容 解決策
分析スキルの不足 専門用語が多く、特許公報が読めない
分析ツールの使い方がわからない
研修プログラムやセミナーに参加する
書籍で体系的に学ぶ
経験豊富な社内の先輩に相談する
データ品質の問題 検索結果にノイズ(無関係な情報)が多い
出願人名が統一されておらず、集計が困難
検索式の精度を高める(特許分類の活用など)
データクリーニング機能を持つツールを利用する
手作業での名寄せ(名称統一)を行う
分析コストの負担 有料ツールは高価で導入できない
外部の専門家への依頼は費用がかかる
まずは無料ツールを徹底的に活用する
クラウド型の安価なサービスを検討する
補助金や助成金の活用を検討する

これらの課題は多くの企業が直面するものですが、段階的なアプローチで解決可能です。特にスキル不足については、特許庁の無料研修や書籍での学習から始め、社内で勉強会を開催するなど、焦らず着実にステップアップすることが重要です。

特許分析には専門家との連携もおすすめ

無料ツールや有料ツールを駆使したセルフ分析でも、多くの有益な情報を得られます。

しかし、分析結果から経営戦略に直結するような深い示唆を導き出すには、高度な専門知識と経験が求められる場面も少なくありません。

そのような場合は、外部の専門家の力を借りることも有効な選択肢です。

専門家に依頼すべきケース

特許分析を専門家に依頼すべきなのは、自社内で十分なリソースや専門知識を確保できない場合です。

例えば、新しい技術分野への参入やM&Aの検討、または特許ポートフォリオの再構築など、企業戦略に直結する高度な分析が必要な場面では、外部の専門家による支援が効果的です。

専門家は多くの業界データや分析ノウハウを持っているため、単なる数値の比較にとどまらず、競合技術の位置づけや今後の研究開発の方向性まで見通した提案ができます。

結果として、経営判断の精度とスピードを高められます。

パートナーの選び方

特許分析のパートナーを選ぶ際は、「分析力」と「業界理解力」の両方を備えているかを確認することが重要です。

単に特許データを整理するだけでなく、自社の事業戦略や技術分野を深く理解し、経営に生かせるインサイトを提供できるかが鍵です。

また、過去の分析実績や専門分野、報告書の質も判断基準になります。

さらに、単発の分析ではなく、継続的に相談できる体制を持つパートナーを選ぶことで、長期的な知財戦略の構築にもつながります。

グローバルな知財のプロフェッショナル「デンネマイヤー」とは

デンネマイヤーは、1962年の設立以来、60年以上にわたって企業の知的財産活動を支援してきたグローバルな総合サービスプロバイダーです。

世界20カ所以上の拠点を持ち、各国の法制度や技術に精通した専門家チームが、お客様のビジネスを強力にサポートします。

私たちは分析データを提供するだけではなく、そのデータから何を読み解き、いかにして事業戦略に落とし込むかというもっとも重要な部分でお客様に寄り添うパートナーです。

特許分析や知的財産に関してお悩みであれば、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ:特許分析をマスターし、ビジネスの成長を加速させよう

本記事では、特許分析の目的から具体的な手法、ツールの選び方、そして専門家の活用までを解説しました。

特許分析は、技術動向や競合の動きを把握し、自社の戦略を立てるための羅針盤です。

目的設定からレポーティングまでの5つのステップで、初心者でも分析を進められます。

まずは無料ツールから始め、目的に応じて有料ツールやAIツールの活用を検討してみましょう。

また、高度な分析や戦略立案には、専門家の知見を活用することも有効な手段です。

分析を通じて得られた知見を武器に、自社のビジネスをさらに成長させていきましょう。

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