特許を取るには何から始める?取得できる発明の基準(新規性・進歩性)から、申請の流れ(先行技術調査→出願→審査請求→審査対応→登録)、必要書類、期間、費用相場まで体系的に解説。電子出願や減免・補助金でコストを抑える方法、拒絶理由通知への対応ポイントもわかります。


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特許を取るには何から始める?取得できる発明の基準(新規性・進歩性)から、申請の流れ(先行技術調査→出願→審査請求→審査対応→登録)、必要書類、期間、費用相場まで体系的に解説。電子出願や減免・補助金でコストを抑える方法、拒絶理由通知への対応ポイントもわかります。
特許を取るには|申請方法・費用・流れなどを解説
企業の新しい発明を、ただの思いつきで終わらせたくないのであれば、特許の取得が有効です。特許は自社の発明や技術を守るだけでなく、新たなライセンス収入としても活用できます。
しかし、特許を取るには取得できる発明の基準・申請方法・費用など、さまざまなルールを知る必要があります。それぞれのルールを把握していないと、特許の取得は困難です。
本記事では、特許取得の全体像を理解できるように、基本的な知識・具体的な申請方法・費用などを解説します。特許を取得する際の参考にしてください。
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特許制度とは、新しい「発明」を保護するための国の制度です。
具体的には、発明をした人(発明者)に対して、その発明を一定期間、独占的に使用できる権利(特許権)を与える仕組みです。その代わりとして、発明者はその技術内容を社会に公開することが求められます。
これにより、他の人はその公開された技術を参考に、さらなる新しい技術を生み出すことができ、産業全体が発展していくことを目的としています。
なお、特許を取得できる発明と、できない発明がある点には注意が必要です。
特許法では、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています。この定義を満たし、特許として認められるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
以下では、特許を取得できる発明の具体例をまとめました。
特許の対象となり得る発明の例 | 具体的な内容 |
物の発明 | 新しい構造を持つ機械・新しい化学物質・特徴的な機能を持つソフトウェアなど、具体的な「物」に関する発明。 |
物を生産する方法の発明 | 特定の物を生産するための、これまでになかった新しい「生産方法」に関する発明。 |
物の生産を伴わない方法の発明 | 測量方法・分析方法・通信方法など、特定の行為を実施するための「方法」に関する発明。 |
上記の発明は、以下の重要な要件を満たすことで特許として登録される可能性があります。
特許を取得するための主要な要件 | 説明 |
新規性 | 特許を出願する前に、その発明が日本国内または海外で公に知られていない、新しいものであること。 |
進歩性 | その分野の専門家(当業者)が、既存の技術から簡単に思いつくことができない、高度なものであること。 |
先願であること | 同じ内容の発明について複数の出願があった場合、もっとも早く出願した人に権利が与えられること(先願主義)。 |
産業利用可能性 | 産業として利用できる発明であること。 |
特許法の定める「発明」に該当しなかったり、公益に反したりするものは特許を取得できません。自分のアイデアが特許の対象になるかを見極めるために、どのようなものが対象外となるのかを理解しておくことも重要です。
特許を取得できない可能性が高い発明は、以下のとおりです。
特許の対象とならないものの例 | 具体的な内容 |
自然法則自体 | エネルギー保存の法則や万有引力の法則など、単なる発見であり、創作ではないもの。 |
自然法則に反するもの | 永久機関のように物理法則を無視した装置など。 |
単なる情報の提示 | 操作方法に関するマニュアルや、単に情報を表示するだけのプログラムなど。 |
人間の精神活動や技能 | 計算方法・暗記術・フォークボールの投げ方といった個人のスキルやノウハウ |
未完成の発明 | アイデア段階で具体的にどのように実現するかが示されていないもの |
公序良俗に反するもの | 犯罪に使用される道具や、人を欺くための装置など、社会の秩序や道徳に反する発明。 |
特許を取得するには時間も費用もかかりますが、以下のようなメリットが期待できます。
独占権で競争優位性を得られる
自社の技術力を証明できる
ライセンス収入を得られる
交渉材料として活用できる
本章では、特許を取得することで得られる具体的なメリットを解説します。
特許を取得する最大のメリットは、国が認めた強力な「独占権」を手に入れられることです。特許権は、出願日から原則として最長20年間、他人が許可なくその発明を実施(製造・販売・使用など)することを禁止できる権利です。
これにより、以下のような効果が期待できます。
メリット | 詳細 |
模倣品の排除 | 競合他社によるコピー商品の製造や販売を差し止め、自社製品の市場を保守できます。 |
市場での優位性 | 自社だけがその技術を使った製品を提供できるため、価格競争に巻き込まれにくく、高い収益性を確保しやすくなります。 |
参入障壁の構築 | 他社が同じ市場に参入する際の技術的なハードルとなり、自社のポジションを強固なものにします。 |
上記の独占権は、特に新しい市場を切り開く技術や、製品の根幹をなす技術において絶大な力を発揮します。
特許の取得は、その発明が特許庁の厳しい審査をクリアし、新規性や進歩性といった要件を満たしていることの客観的な証明です。加えて、以下のような無形の価値を生み出します。
メリット | 詳細 |
社会的信用の向上 | 「特許取得済」という事実は、取引先や顧客、金融機関に対して高い技術力を持っていることのアピールとなり、信頼度を高めます。 |
資金調達での有利性 | ベンチャーキャピタルからの投資や銀行からの融資を受ける際に、特許という知的財産は事業の将来性や安定性を示す重要な評価材料となります。 |
ブランドイメージの強化 | 革新的な技術を持つ企業としてのブランドイメージを構築し、優秀な人材の採用にもつながります。 |
上記のように、特許は単なる権利証ではなく、自社の技術力と信頼性を社会に示す「勲章」のような役割も果たします。
自社で発明を実施しない場合でも、特許権を他社にライセンス供与(使用許諾)することで、収益を得られます。ライセンス供与は、自社の技術資産を有効活用し、新たな収益源を確保するための重要な戦略です。
なお、代表的なライセンスの種類は以下のとおりです。
ライセンスの種類 | 内容 |
専用実施権 | 特定の範囲内で、独占的に発明を実施する権利を1社に与える契約。ライセンシー(権利を与えられた側)は、権利者と同様に第三者の侵害を排除できます。 |
通常実施権 | 複数の企業に対して、同じ発明を実施する権利を与える契約。独占性はありませんが、幅広い企業に技術を使ってもらうことで収益の安定化が図れます。 |
優れた発明を特許化すれば、ライセンス収入のような安定的な収益をもたらします。
特許権は、他社とのビジネス交渉における強力なカードです。特に、複数の企業がさまざまな技術を持ち寄って製品を開発する現代において、特許は戦略的なツールとして機能します。
メリット | 詳細 |
クロスライセンス | 自社と他社が互いに保有する特許権の実施を許諾する契約です。これにより、互いに訴訟リスクを回避しながら、自由に技術を使い、事業を発展させられます。 |
事業提携の促進 | 自社の持つ特許技術を魅力的な条件として提示することで、大手企業との共同開発や業務提携といった有利なパートナーシップを築きやすくなります。 |
防衛的機能 | もし他社から特許侵害で訴えられた場合でも、自社が保有する特許を盾に交渉を有利に進め、和解に持ち込むといった防衛的な使い方も可能です。 |
上記のように、特許は単独で使うだけでなく、他社の権利との関係性の中で戦略的に活用することで、その価値を何倍にも高められます。
特許取得には多くのメリットがありますが、その一方で、事前に理解しておくべき注意点やデメリットも存在します。特許取得におけるデメリットは以下のとおりです。
一定の費用がかかる
権利取得まで時間を要する
技術の情報を公開しなければならない
取得に知識が必要になる
永続的な独占はできない
上記のリスクを正しく理解し、自社の状況と照らし合わせることが、賢明な知財戦略の第一歩です。
特許を取得し、その権利を維持するためには、決して安くない費用が発生します。費用は大きく分けて、特許庁に支払う「公的費用」と、手続きを専門家に依頼した場合の「代理人費用」の2種類があります。
それぞれの費用の内訳は以下のとおりです。
費用の種類 | 主な内訳 | 費用の目安(1件あたり) |
公的費用(特許庁) | 出願料・審査請求料・特許料(年金) | 最低でも約16万円~ |
代理人費用(弁理士) | 出願手数料・中間処理費用・成功報酬など | 約60万円~200万円以上 |
特に、個人や資金力に乏しい中小企業にとって、上記の費用負担は大きなハードルとなり得ます。特許を取得する際は、事業計画に想定される知財コストをあらかじめ組み込んでおくことが重要です。
アイデアを思いついてから実際に特許権を取得するまでには、かなりの時間がかかります。一般的に、出願から特許査定(権利化の決定)までには、1年以上、長ければ2年以上の期間を要します。
具体的な期間は以下のとおりです。
手続きの段階 | 平均的な期間 |
出願審査請求から最初の審査結果通知まで | 約10カ月 |
最終処分までの標準審査期間 | 数カ月~1年以上 |
技術の進化が速い分野では、「権利が成立したころには申請した技術が時代遅れになっている」といったリスクも考えられます。事業のスケジュールと特許取得のタイムラインを照らし合わせ、戦略的に手続きを進めましょう。
特許制度は、発明を独占する権利を与える代わりに、技術内容を社会に公開することを原則としています。特許出願を行うと、出願日から1年6カ月が経過した時点で、その内容は「公開特許公報」として誰でも閲覧できる状態になります。
情報公開は義務ですが、以下のようなリスクを伴う点に注意しなければなりません。
リスク | 説明 |
技術の模倣 | 公開された情報をヒントに、競合他社が特許を回避する別の技術(代替技術)を開発する可能性があります。 |
ノウハウの流出 | 製品を分解しても分からないような製造ノウハウなども、明細書に記載することで公開されてしまいます。 |
技術の性質によっては、特許で公開するよりもノウハウとして秘匿し続ける方が有利な場合もあります。
参照:特許法第六十四条
特許出願の書類作成や、特許庁の審査官とのやり取り(中間処理)は、高度な専門知識と経験が要求されます。特に、権利の範囲を定める「特許請求の範囲」の記載は、権利の価値を左右するもっとも重要な部分です。
取得に際しては、以下の取り組みを実施しましょう。
要素 | 説明 |
書類作成の複雑さ | 明細書や図面は、その分野の専門家が発明を再現できる程度に、明確かつ十分に記載する必要があります。 |
法律的な判断 | 審査官からの拒絶理由に対して、法律や判例に基づいて的確に反論するための意見書や、権利範囲を適切に修正する補正書の作成が必要です。 |
期限管理の厳格さ | 特許手続きには多くの厳格な期限が設けられており、一つでも逃すと権利を失う可能性があります。 |
スムーズに権利を取得するためには、弁理士などの専門家のサポートが不可欠となるケースが多いのが実情です。
特許権は、永久に続く権利ではありません。
権利の存続期間は、原則として出願日から20年で満了します。期間が満了した後は、その技術は社会全体の共有財産(パブリックドメイン)となり、誰でも自由に利用できるようになります。
また、権利を20年間維持するためには、毎年「特許料(年金)」を特許庁に納付し続けなければなりません。この年金は、年数が経過するごとに高額になっていく仕組みです。
事業の採算が合わなくなったなどの理由で年金の支払いを止めると、その時点で特許権は消滅してしまいます。
なお、特許権は以下の事由に該当する場合、存続期間の延長が可能です。
特許法第六十七条の二
前項に規定する存続期間は、特許権の設定の登録が特許出願の日から起算して五年を経過した日又は出願審査の請求があつた日から起算して三年を経過した日のいずれか遅い日(以下「基準日」という。)以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができる。
特許法第六十七条の三
前項の規定により延長することができる期間は、基準日から特許権の設定の登録の日までの期間に相当する期間から、次の各号に掲げる期間を合算した期間(これらの期間のうち重複する期間がある場合には、当該重複する期間を合算した期間を除いた期間)に相当する期間を控除した期間(以下「延長可能期間」という。)を超えない範囲内の期間とする。
参照:特許法第六十七条
上記を踏まえ、取得した特許が本当に事業に貢献しているのかを定期的に見直し、権利を維持するかどうかを判断する知財ポートフォリオ管理が重要です。
特許申請とは、特許庁に対して決められた手順に沿って手続きを進めることです。本章では、アイデアが生まれてから特許権が発生するまでの道のりを、以下のステップに分けて解説します。
先行技術を調査する
特許願を作成する
特許印紙を貼付する
特許庁に提出する
電子化手数料を送付する
方式審査を受ける
出願公開が行われる
出願審査請求を行う
実体審査が開始される
特許査定が出される
特許料を納付する
年金の支払いを継続する
上記のプロセスは専門的で複雑に感じられるかもしれませんが、全体の流れを把握することで、今自分がどの段階にいるのか、次に何をすべきかが明確になります。
特許を取るには、まず先行技術調査から始めることが重要です。発明が完成したら、最初に行うべきもっとも重要なステップが「先行技術調査」です。これは、自分の発明と同じ、あるいは類似した技術がすでに出願・公開されていないかを調べる作業です。
先行技術調査には、以下のメリットが期待できます。
特許取得の可能性を判断できる | 類似技術が見つからなければ、特許になる可能性が高いと判断できます。 |
無駄な出願を防ぐ | すでに同じ技術が存在する場合、時間と費用をかけて出願しても権利化は難しいため、無駄なコストを削減できます。 |
権利範囲を明確化できる | 既存技術との違いを明確にすることで、より質の高い出願書類を作成できます。 |
先行技術の調査を実施する際は、特許庁が提供する無料のデータベース「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」などを活用しましょう。
先行技術調査で特許取得の可能性があると判断できたら、次に特許願を作成します。これは特許庁に自分の発明を正式に認めてもらうための、もっとも重要な書類群です。
該当する書類は以下のとおりです。
主要な出願書類 | 内容 |
願書(特許願) | 発明者や出願人の氏名・住所などを記載する、手続きの基本となる書類です。 |
明細書 | 発明の名称、図面の簡単な説明、発明の詳細な説明を記載します。その分野の専門家が読んで、発明を実施できるレベルまで詳しく書く必要があります。 |
特許請求の範囲 | 特許として保護を求める発明の範囲を具体的に記載します。この記載内容が、そのまま権利の範囲となります。 |
要約書 | 発明の概要を簡潔にまとめたもので、他の人が技術を検索する際に利用されます。 |
上記の書類作成は、特許制度の根幹に関わるため、非常に専門的な知識が求められます。
特許出願を行う際には、手数料として出願料を国に納める必要がありますが、収入印紙ではなく「特許印紙」で支払います。
特許印紙は、主要な郵便局や、特許庁内の販売所で購入が可能です。購入した特許印紙を、作成した願書(特許願)の指定された箇所に貼り付けて提出しましょう。
なお、オンラインで出願(電子出願)する場合は、予納口座からの引き落としや銀行振込などで電子的に納付します。
必要な書類がすべて整い、特許印紙を貼付したら、いよいよ特許庁へ提出します。提出方法は、大きく分けて2種類です。
提出方法 | 詳細 |
郵送または持参 | 作成した書類一式を、特許庁の窓口に直接持参するか、郵送で提出します。郵送の場合は、書留や簡易書留など、記録が残る方法が推奨されます。 |
オンライン(電子出願) | 専用のソフトウェアを使って、インターネット経由で出願します。手数料が割引になるなどのメリットがあります。 |
出願が受理されると、その出願に対して出願番号が付与され、出願日が確定します。出願日は後々の権利関係を判断するうえで非常に重要です。
書面(紙)で特許出願を行った場合、特許庁はその書類をスキャンして電子データに変換します。この電子化作業にかかる費用として、出願人は「電子化手数料」を納付する必要があります。
この手数料は、出願書類の枚数によって変動し、後日特許庁から送られてくる振込用紙を使って支払うものです。
なお、最初からオンラインで電子出願を行えば、電子化手数料は不要です。そのため、コスト削減の観点からも電子出願が推奨されています。
出願された書類は、まず「方式審査」と呼ばれるチェックを受けます。これは、提出された書類が様式をきちんと守っているか、必要な手数料が納付されているかといった、手続き上の不備がないかを確認するための審査です。
方式審査で問題となるのは、書類の体裁・記載事項の不足・誤字脱字・必要な添付書類の欠如など、形式的な側面です。
発明の内容そのものの新規性や進歩性といった本質的な部分は、方式審査の段階では一切審査されません。あくまで、出願書類が特許庁で受け付けられるための最低限の条件を満たしているかどうかがチェックされます。
もし書類に何らかの不備が見つかった場合は、特許庁から「補正指令」が送られてきます。この補正指令には、具体的に修正すべき点が記載されており、出願人は指定された期間内に必要な修正を行い、特許庁に提出しなければなりません。
この期間内に対応しない場合、出願が却下される可能性もあります。
特許出願された発明の内容は、原則として出願日から1年6カ月が経過すると、特許庁によって自動的に公開されます。これを「出願公開」といい、その内容は「公開特許公報」として発行され、誰でも閲覧できるようになります。
出願公開は、同じような研究開発の重複を防ぎ、公開された技術をヒントに新たな技術開発を促すことで、産業全体の発展に貢献することを目的としたプロセスです。審査の結果、特許にならなかったとしても、出願した事実は公開されます。
特許申請とは出願だけでなく審査請求も必要な手続きです。特許出願をしただけでは、発明の内容についての本格的な審査(実体審査)は始まりません。審査を開始してもらうためには、出願とは別に「出願審査請求」と呼ばれる手続きを行う必要があります。
出願審査請求は、出願日から3年以内に行わなければなりません。もし期間内に行わないと、その出願は取り下げられたものとみなされ、権利化の道が閉ざされてしまいます。
なお、審査請求には、手数料(審査請求料)がかかります。この制度は、本当に権利化を望む出願だけを審査することで、審査の効率化を図るためのものです。
出願審査請求後、特許庁審査官による「実体審査」が開始されます。実体審査は、発明の内容が特許要件(産業上の利用可能性・新規性・進歩性など)を満たすかを詳細に調べる審査です。
審査官は、先行技術調査で発見された文献と比較し、発明が既存技術と比較して新規性・進歩性を有するかを判断します。進歩性の判断では、当業者が容易に発明できているかも考慮されるので留意しましょう。
審査の結果、特許要件を満たしていると判断されれば特許査定が出され、特許料を納付することで特許権が発生します。
一方、特許要件を満たしていないと判断された場合は拒絶理由通知が送付されます。ただし、拒絶理由通知が送付されても、特許取得の可能性がなくなったわけではありません。
拒絶されても、出願人は意見書や補正書を提出して反論する機会が与えられます。
審査の結果、審査官が「この発明は特許の要件をすべて満たしている」と判断した場合、「特許査定」と呼ばれる通知が出願人に送られます。これは、特許権を与えることを認めることを記載した、特許庁からの正式な決定通知です。
この通知を受け取ったら、権利取得まであと一歩です。
特許査定の通知を受け取ったら、指定された期間内(通常は30日以内)に「特許料(登録料)」を納付します。まずは、第1年から第3年分をまとめて支払う必要があります。
特許料が納付されると、発明の内容が特許原簿に登録され、正式に「特許権」が発生します。
一度特許権が発生しても、それで終わりではありません。その権利を維持するためには、4年目以降も毎年、特許料(年金)を支払い続ける必要があります。
もし、年金の支払いを怠ると、特許権はその時点で消滅してしまいます。年金の額は、権利の維持年数が長くなるにつれて高額になっていくため、その特許が事業にとって本当に必要か、定期的に見直すことが重要です。
近年、特許出願の主流となっているのが、インターネットを利用した「電子出願」です。電子出願は、書面での出願に比べて、「手数料が安くなる」「24時間365日いつでも手続きが可能」「特許庁への書類到着が速やかで確実」といった多くのメリットがあります。
企業の特許を電子出願するには、まず特許庁の「電子出願ソフトサポートサイト」で申請人利用登録を行い、識別番号を取得します。
次に、特許庁提供の電子出願ソフトをインストールし、出願書類を作成しましょう。ソフトの様式に従い、明細書や図面を組み込み、出願データを作成したら、ソフトの送信機能で特許庁へオンライン提出します。
手数料は、口座振替・クレジットカード納付・インターネットバンキングなどの方法でも納付が可能です。
実体審査の結果、残念ながら発明が特許の要件を満たしていないと判断されることもあります。しかし、拒絶された場合でも、権利化を目指すためのいくつかの手段が残されているので、すぐにあきらめないようにしましょう。
本章では、拒絶査定された際の特許庁の通知内容に加え、企業が実施できる対応について解説します。
審査官が特許にできない理由(拒絶理由)を発見した場合、いきなり拒絶査定を下すのではなく、まずは「拒絶理由通知」を送付してくれます。これは、出願人に対して反論の機会を与えるためのものです。
通知には、どの先行技術文献に基づいて新規性や進歩性が否定されるのか、具体的な理由が記載されています。
この通知を受け取ったら、指定された期間内(通常60日以内)に、以下の対応を実施できます。
書類名 | 説明 |
意見書 | 審査官の判断に対して、法的な根拠や実験データなどを用いて反論する書類です。 |
手続補正書 | 特許請求の範囲を狭めるなど、発明の内容を修正して拒絶理由を解消するための書類です。 |
この段階での的確な対応が、特許取得の可否を分ける重要なポイントです。
意見書や補正書を提出しても拒絶理由が解消されないと判断された場合、審査官は最終的に「拒絶査定」を下します。審査官の判断に不服がある場合、出願人はさらに上級の判断を求められます。
この一連の流れが「拒絶査定不服審判」です。
拒絶査定不服審判は、3名または5名の審判官からなる合議体が、審査官の判断が妥当であったかをあらためて審理する手続きです。審判を請求する際には、なぜ審査官の判断が誤っているのかを主張するとともに、必要であれば手続補正書を再度提出できます。
審判の結果、主張が認められれば、拒絶査定が覆され、特許査定が下されることになります。
参照:拒絶査定不服審判|特許庁
特許を取得し、維持するためにはさまざまな段階で費用が発生します。特許取得の費用の総額は、手続きを自社で行うか、専門家である弁理士に依頼するかによって大きく異なります。
以下では、具体的な費用の内訳と、それぞれのケースでの総額の目安について詳しく見ていきましょう。
手続きの段階 | 費用の種類 | 金額の目安 | 備考 |
1. 出願時 | 出願料 | 14,000円 | 特許庁に支払う基本手数料。 |
| 弁理士手数料(出願) | 25万円 ~ 35万円 | 弁理士に書類作成・提出を依頼した場合の費用。 |
2. 審査請求時 | 審査請求料 | 138,000円+(請求項数 × 4,000円) | 審査を依頼するための手数料。請求項数3つの場合、150,000円。 |
3. 審査対応時 | 弁理士手数料(中間処理) | 10万円~ | 拒絶理由通知への対応(意見書・補正書作成)を依頼した場合の費用。対応の回数により変動。 |
4. 特許査定後 | 特許料(第1~3年分) | 4,300円+(請求項数×300円)×3年 | 権利を登録・維持するための費用。請求項数3つの場合、15,600円。 |
| 弁理士手数料(成功報酬) | 10万円~ | 弁理士に依頼し、無事特許査定を得られた場合の費用。 |
5. 権利維持 | 特許料(第4年以降) | 年々増加(4年目~6年目は毎年10,300円+請求項数×800円) | 毎年納付が必要な年金。 |
【費用総額の比較】
ケース | 特許庁費用(最低限) | 弁理士費用(目安) | 総額(目安) |
自社で手続きする場合 | 約18万円(出願料+審査請求料+特許料3年分) | 0円 | 約18万円 ~ |
弁理士に依頼する場合 | 約18万円 | 約45万円 ~(出願+成功報酬) | 約63万円 ~ |
上記のように、弁理士に依頼すると費用は高くなりますが、専門的な知識で質の高い権利を取得できる可能性が高まります。
一方で、自分で行う場合は費用を大幅に抑えられますが、手続きの複雑さ・時間的な負担・権利の質が担保されないリスクを負うことになります。
自身の状況に合わせて、最適な方法を選択することが重要です。
特許取得にかかる費用は決して安価ではありませんが、国や関連機関が設けているさまざまな支援制度などを活用することで、その負担を大幅に軽減することが可能です。本章では、費用を抑えるための以下の方法を紹介します。
減免制度
補助金・助成金
日本弁理士会の援助制度
電子出願による割引
特に、個人発明家・中小企業・スタートアップにとっては、上記の制度を賢く利用することが、イノベーションを実現するための鍵です。
特許庁では、資力の乏しい個人や、特定の条件を満たす中小企業などを対象に、審査請求料や特許料(第1年~第10年分)を軽減する「減免制度」を設けています。要件を満たせば、これらの費用が2分の1または3分の1にまで軽減されます。
減免制度の軽減率や要件は以下のとおりです。
対象者 | 軽減率 | 主な要件 |
個人 | 1/2 または 1/3 | 市町村民税非課税者・生活保護受給者など |
中小企業・スタートアップ | 1/2 または 1/3 | 資本金の額・設立後の年数・赤字決算など |
大学・研究機関 | 1/2 | 国公立大学・独立行政法人など |
以前は申請書の提出が必要でしたが、2019年4月以降は手続きが簡素化され、願書や請求書に減免を受けたい旨を記載するだけで適用されるようになりました。自分が対象となるか、特許庁のウェブサイトで最新の情報を確認してみましょう。
国や地方自治体、各種公的機関では、中小企業の知的財産活動を支援するために、さまざまな補助金や助成金制度を用意しています。これらは、特許出願にかかる費用の一部を補助してくれるもので、返済不要の資金として活用が可能です。
例えば、中小企業庁が実施している「ものづくり補助金」は、知的財産権等関連経費として、特許の取得費用が補助対象に含まれています。ものづくり補助金の詳細は以下のとおりです。
項目 | 製品・サービス高付加価値化枠 | グローバル枠 |
目的 | 革新的な新製品・新サービスの開発の取り組みを支援 | 海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みを支援 |
補助上限額(補助下限額100万円) | 従業員数 5人以下:750万円 6~20人:1,000万円 21~50人:1,500 万円 51 人以上:2,500万円 | 3,000万円 |
補助率 | 中小企業:1/2 小規模事業者等:2/3 | 中小企業:1/2 小規模事業者等:2/3 |
対象経費 | 機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 | 機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費(グローバル枠のうち、海外市場開拓(輸出)に関する事業のみ)海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費 |
参照:中小企業庁担当者に聞く「ものづくり補助金(令和6年度補正)」|ミラサポplus
上記のとおり、ものづくり補助金は特許の申請だけでなく、さまざまな用途で役立つ補助金です。
もちろん、ものづくり補助金以外にも特許の取得に役立つ補助金・助成金制度は存在します。自社の所在地や事業内容に合った制度がないか、「J-Net21」などの支援情報サイトで検索してみましょう。
資金的に余裕がなく、専門家である弁理士への依頼をためらっている個人や中小企業のために、日本弁理士会が「特許出願等援助制度」を設けています。この制度は、審査を通過した案件について、出願手続きの費用の一部を日本弁理士会が引き受けてくれるものです。
これにより、専門家の力を借りながら、費用負担を抑えて質の高い特許出願を行えます。ただし、援助を受けるためには、日本弁理士会が提示する要件を満たす必要があるので注意しましょう。
前述の通り、特許出願は書面(紙)で行う方法と、インターネットを利用したオンライン(電子)で行う方法があります。国は電子化を推進しており、電子出願を利用すると手数料が割引になります。
郵送出願・電子出願の料金の違いは以下のとおりです。
手続き | 書面の場合 | 電子出願の場合 |
電子化手数料 | 2,400円+(枚数×800円) | 不要 |
電子出願を行うためには初期設定が必要ですが、長期的に見ればコストメリットがあります。これから出願を考えるのであれば、積極的に電子出願の利用を検討すべきです。
特許取得を達成するためには、単に手続きの流れを知っているだけでは不十分です。本章では、発明を価値ある権利へと昇華させるうえで役立つ、以下のポイントを解説します。
発明の新規性や進歩性を必ず確認する
出願するタイミングに注意する
書類準備は入念に行う
権利範囲は事業戦略に合わせる
専門家と連携する
上記のポイントを踏まえたうえで戦略的な視点を持ち、各段階で適切な判断を下していくことが、成功の確率を大きく左右します。
出願手続きを進める前に、もっとも時間をかけて丁寧に行うべきプロセスが「先行技術調査」です。この調査を怠ると、後になって同じような技術がすでに見つかり、時間と費用が無駄になってしまう可能性があります。
先行技術調査を実施する際は、以下のポイントに注意しましょう。
調査の範囲 | 日本国内だけでなく、海外の特許文献や、学術論文、インターネット上の情報なども含めて広く調査します。 |
調査の視点 | 自分の発明と全く同じものがないか(新規性)、既存の技術から簡単に思いつくものではないか(進歩性)といった2つの視点で厳しくチェックします。 |
ツールの活用 | 特許庁の「J-PlatPat」や、民間の特許データベース、AIを活用した検索ツールなどを駆使して、効率的かつ網羅的に調査を行いましょう。 |
上記の内、特に新規性・進歩性の確認は非常に重要です。これらは特許の定義に該当する重要な要件であり、それぞれを満たしていない審査を通過する可能性が低下します。
日本の特許制度は「先願主義」を採用しており、同じ発明については、一日でも早く出願した申請者に権利が与えられます。そのため、発明が完成したら、できるだけ速やかに出願することが原則です。
しかし、急ぐあまり、発明の内容が不十分なまま出願してしまうと、権利範囲が狭くなったり、最悪の場合は権利化できなかったりするリスクもあります。
出願するタイミングについては、以下のポイントを意識しましょう。
情報公開前の出願 | 学会での発表や製品の販売など、発明の内容を公にしてしまうと「新規性」が失われ、原則として特許を取得できなくなります。必ず公開前に出願を済ませましょう。 |
発明の完成度 | アイデア段階ではなく、その分野の専門家が実施できるレベルまで具体化されてから出願することが重要です。 |
特許を出願する予定の発明は、必ず非公開のままにしておきましょう。先に公開してしまうと、新規性を失う恐れがあります。
また、特許を取得する際、発明の内容は実施できるレベルの具体性が求められます。しかし、完成度を高める作業に時間をかけすぎると、ほかの企業に先を越される可能性があるので注意が必要です。
出願書類、特に「明細書」と「特許請求の範囲」の完成度が、特許の価値を左右します。これらの書類は、一度提出すると、後から内容を大幅に変更すること(新規事項の追加など)は認められません。
そのため、出願前に以下のような準備をしておきましょう。
ポイント | 詳細 |
明確かつ十分な記載 | 第三者が読んでも発明の内容を正確に理解し、再現できるレベルまで、詳細に記載する必要があります。 |
多角的な視点 | 発明のさまざまな実施形態や応用例を記載しておくことで、将来的に他社が権利範囲を回避しにくくなります。 |
図面の活用 | 文章だけでは伝わりにくい構造や動作は、図面を用いて視覚的にわかりやすく説明することが効果的です。 |
書類の完成度を高めるには、弁理士などの専門家にチェックしてもらう方法が効果的です。
「特許請求の範囲」に記載する内容は、広すぎても狭すぎてもいけません。自社の事業戦略と密接に連携させ、最適な権利範囲を設定することが求められます。
権利範囲の設定に失敗すると、以下のリスクが発生します。
広すぎる権利範囲のリスク | 権利範囲を欲張って広げすぎると、先行技術に抵触しやすくなり、審査で拒絶される可能性が高まります。 |
狭すぎる権利範囲のリスク | 権利範囲が製品の特定の仕様に限定されすぎていると、競合他社が少し設計を変更するだけで簡単に権利を回避できてしまい、意味のない特許になってしまいます。 |
上記のリスクを踏まえたうえで将来の事業展開を見据え、どこまでを自社の独占領域とし、どこからを他社に開放するのか、戦略的な判断が必要です。
特許取得のプロセスは非常に専門的であり、個人ですべてを完璧に行うのは困難です。経験豊富な専門家のサポートを受ければ、申請のプロセスをスムーズに完了できるうえに、特許を取得できる可能性を高められます。
特に、以下のサポートは重要です。
質の高い書類作成 | 専門家は、法的・技術的な観点から、強く、広い権利を取得するための最適な書類を作成してくれます。 |
的確な審査対応 | 審査官からの拒絶理由に対して、豊富な経験と知識に基づき、論理的かつ効果的な反論を行ってくれます。 |
戦略的なアドバイス | 単なる手続きの代行だけでなく、事業全体を見据えた知財戦略の構築についても相談に乗ってくれます。 |
費用はかかりますが、弁理士のような知的財産の専門家と連携することで、成功の確率を格段に高められます。
特に、グローバルな事業展開を視野に入れる場合、世界各国にネットワークを持つ知財サービス企業のサポートは不可欠です。あらかじめ最適な専門家を見つけておきましょう。
特許の取得は、企業の発明をビジネスに最大限活用するうえで欠かせない取り組みです。しかし、特許の定義・特許にする範囲を理解するだけでなく、申請手順や費用などを把握しておかなければ、取得は見込めません。
特許の取得はプロセスをステップごとに分解し、要点を押さえれば、スムーズに進められます。また、先行技術調査のような作業を徹底することも重要です。
自社だけで特許の取得が難しい場合は、弁理士などのような専門家のサポートも受けましょう。専門家のアドバイスを得ることで、申請を円滑に進められるだけでなく、特許を取得できる可能性を高められます。